連結送水管 配管耐圧試験

こんばんは、八巻です。

前回の投稿から結構な間隔が開いてしまいました。

 

連結送水管の耐圧試験のお見積り依頼をたくさんいただいております。

 

連結送水管とは、7階建て以上の建物(※)に設置される設備で

火災発生時に消防隊が使用するためのものです。

1階部分に「送水口」という、消防隊がポンプ車等からホースを接続する配管があり、

「放水口」という送られてきた水を放水するための配管が3階以上の各階に設けられているので

火災発生の階にある放水口にホースを接続し、速やかに消火活動を行うための設備です。

 

<送水口の例>

 スタンド型

 埋め込み型

 

<放水口の例>

 3階より上階の各階に設置

 11階以上はあらかじめホースも設置

 

(※ 5~6階建てでも床面積6,000㎡以上の場合や、

 1,000㎡を超える地下にも設置義務があります。)

 

「屋内(屋外)消火栓設備」はその建物自体にポンプと水槽を設け

消防隊の到着を待たずに誰でもすぐに消火活動に入ることの出来る設備ですが、

消火栓設備はある一定の床面積を超えた建物でないと設置されないため

消火栓の設置が義務にならない建物でも、地上7階を超える場合に

消火活動を有効にするために設置を義務付けられた設備が連結送水管です。

 

この連結送水管は、新築の新規設置時と配管を全改修した時から10年後、

それ以降は3年毎に1回、配管耐圧試験の実施と消防報告が義務付けられています。

 

耐圧試験は送水口と最上階又は屋上など最も遠い放水口にそれぞれ圧力計を設置し

実際に水を送って3分間圧力を計測します。

圧力に変化が無ければどこからも漏水が無いことがわかるので、

多くの場合は試験結果良好!ということで消防報告になるのですが

つい先日耐圧試験を行った建物で、圧力が低下する事象が発生しました。

 

圧力が低下する要因はいくつかあり、

各階の放水口のバルブや仕切弁、排水弁のバルブが完全に締め切られていなかったり

屋上補給水槽(湿式の場合)の逆止弁に不具合があったりなど。

それらに問題がない場合は、配管そのものに亀裂箇所や損傷があることになります。

 

この建物では各バルブ類、逆止弁等に問題はなく

目視が可能な配管の露出部分からの漏水箇所が確認できなかったため、

1F送水口より下の配管の埋設部分に不具合がある可能性が高いと判断しました。

ちなみに3年前の耐圧試験の報告書を確認すると、問題無しでした。

日本は地震が多いことに加え、建物自体の老朽化もあるので

たった3年の間にこういうことが起きてしまうこともあるわけです。

(まあそれを見抜くための試験でもあるのですが)

 

配管に損傷があった場合、乾式設備(配管内はカラ)と違い

湿式設備(配管内は常に充水状態)だと損傷個所から絶えず水漏れが起こり

損傷箇所の場所によっては水損事故を発生させてしまう危険もあります。

(水道料金も気づくまでの間かなりかかります)

 

そのため、乾式設備で耐圧試験時にいきなり水を送って水損を起こす危険性が考えられるような場合

弊社では相当期間の間耐圧試験が未実施だった建物や、3年に1回試験を行っていても

築年数が20年を超えるような建物の時にはエアー試験の実施をお勧めしています。

耐圧試験時に水ではなく、その予備試験としてエアーを送って圧力の低下がないかを

あらかじめ確認します。ここで圧力低下が発見されても送っているのは空気なので

最悪水損事故を未然に防止出来るというわけです。

今回の建物では幸いなことに水損事故は発生しないで済みましたが、

古い建物の場合はぜひエアー試験をご検討いただければと思います。

 

余談ですが、あさま山荘事件を描いた「突入せよ!あさま山荘」という映画の

クライマックスで、放水で壁をぶち抜き犯人逮捕に突入するシーンがあります。

通常、1人の人間が操作出来る放水圧力の限界が0.7メガパスカルと言われていますが

0.7では壁をぶち抜けない、1.3は必要だということになり劇中の言葉を借りれば

「13気圧(=1.3MPa)となったら大の男4人でも吹っ飛ばされることもある!」

とあるように、消防隊の放水圧力ってそれくらいすごいんですね。

各建物でも高さや系統数等で配管の耐久圧力値が違いますが、

それだけの圧力をかけて消火活動をするので、配管に損傷があると

損傷箇所から配管の破壊に繋がる危険度が増すことになります。

 

連送を含む消防設備はマンション・ビル等に設けられた水道設備、空調設備

などと同様にいつか老朽化し、故障も起き、改修が必要になります。

消防設備が故障していても火災が発生しない限り不利益を実感することがないため

つい後回しにされがちですが、有事の際に不具合が原因で

怪我や後遺症、人命を落とされる方がお一人でも出ずに済ませられるよう

不具合があれば可能な限り速やかな改修をぜひお考えいただきたく切に思います。